蝦名信英の北のIT革命家への道


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作者紹介

蝦名信英
(株)アジア海援隊 代表取締役
今後の活躍が期待されるIT関連事業の起業家(ITベンチャー)
写真はビル・アトキンソン氏との1枚です。

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論文著書
・「中学校の授業内における評価予告の効果と内発的動機づけ」1986.北海道心理学会 第9号 27p
・「授業場面における有能感及自己決定感の研究」1987.北海道心理学会 第10号 56p
・1988年7月から1989年5月まで「カムイの言語見聞録」連載記事ソフトバンク 雑誌Oh!FM
・1999年3月から2000年7月までコラム連載 日本工業出版 月刊誌「情報端末」
・書籍「HyperTalk2」共著 1991.9月 ソフトバンク
・書籍「マルチメディア事典」共著 1994.8月 朝日新聞社
・書籍「マルチメディア事典 改訂版」共著 1996.3月 ソフトバンク
・書籍「SoftImage|3D POWER GUIDE」共著/プロデュース 1997.12.16 ソフトバンク
・書籍「マッキントッシュガイドブック」共著/プロデュース 1998.2.25 ソフトバンク
・書籍「BASICでわかる数学」著者1999.7.28 ソフトバンクパブリッシング

・昭和63年7月:マイクロソフト主催全国エクセルテンプレートコンテスト マクロ賞受賞
・平成9年10月3日:札幌商工会議所 優秀者員特別貢献賞受賞
・平成14年8月:みやぎITベンチャー2002認定
・平成14年12月:宮城県元気発掘事業認定
・平成15年3月:NHK札幌・道新主催「第2回ふるさとCM大賞2002」北海道知事賞受賞 「さよなら大夕張」

■今日のお題:日本が世界に誇れること


 最近、我が国は、終身雇用制と年功序列制度を復活させようという気風があります。
 戦後日本を支えてきた企業形態は、この2つの制度によって支えられてきました。佐藤内閣下による長期政権と高度成長からバブル期に至る30年は戦前戦後の経営者の知恵として当たり前のようにこの国の土壌となっていったのです。
 そのころの米国は、デトロイトやシカゴの自動車工場に代表されるように、会社組織が膨張して経営が行き詰まると一転してレイオフして急場をしのぐという繰り返しの連続でした。もしくは、会社を分割して独立採算制を採用したり、成長すると再編するといった企業の戦国時代でした。
 一概には断定できませんが、国民総生産という尺度を用いると、米国のこの方法の方が他国を圧倒する水準を築くことができた、といえます。国民総生産は世界第1位でも生産性を重要視するあまり、品質という点では米国の消費者を満足させることができなかったのでした。
 日本はこの点に着目し、徹底した品質管理と低価格戦略で米国の市場を凌駕してきました。当時、国内でカラーテレビは20万円していたが、全く商品なのに米国では5万円で販売されていました。一眼レフカメラも、精密な時計もmade in JAPANのためにあるようなものだったのです。
 低価格で良質な商品という戦略が成功したのだと日本の経済学者は機会あるごとに書き立て、われわれもそう信じさせられてきました。
 NHKの技術立国日本、最近のプロジェクトXでも成功原因を低価格で良質、優れた技能にスタンスを置いて説明しています。それほどアジアの奇跡は驚異的だったのでしょう。
 米国の経営者に広く読まれていたのは、邦訳されている「ピータの法則」であったし、米国民に広く信じられてきました。
 「ピータの法則」を簡単に解説すると、車の修理に熱心で腕の立つピータ(という人物を登場させて具体的に説明している)がいたとしましょう。得意先も多く人気もあるので経営者がピータを、その報酬の多い一段上のマネージャの地位へと昇格させた瞬間、ピータの生産性が低下し会社全体の収益も落ちてしまった、というエピソードをもとに米国の労働者に対する扱いを啓蒙しています。
 要は、その人にはその人に適した仕事があり、マネージャーや課長という人を使う仕事に不向きな人がいます。つまり労働者は決まった仕事をきっちりこなすことに喜びがあるのであって、経営者のような向上心や野心は持ち合わせてはいない人種なのだ、ということを婉曲に伝えています。
 そうして歴史を振り返ると、米国で「ピータの法則」が浸透し、その通りの経営体制を敷いているときは、日本の商品が米国の商品を圧倒することができたということになります。そのころの日本は前述した終身雇用制と年功序列制度下にあった企業形態でした。
 このころ確かに米国は日本人を、働きすぎとか、うさぎ小屋とかという意味不明な日本バッシングをして、外圧に弱い我が国は、そうかな、とかいって週休二日制に移行してしまうのです。働きすぎもうさぎ小屋批判も紛れもなく米国のやっかみと国内干渉でした。
 だが米国のすごいところは、謙虚に日本の会社形態を研究したことにあります。
 一方で日本人バッシングを助長しておきながら、わざわざ日本まで来て日本企業の見学や日本の経営セミナーに耳を傾けたのです。
 中には、日本の経営方法をまねた企業も出てきたが、彼らの研究の結果、実は終身雇用制と年功序列制度が日本の企業形態の本質ではないことを見抜きました。そして彼らが日本にある本質的な違いを米国は米国風に取り入れたのです。
 それは日本のリーダシップ理論でした。
 世界の心理学会で唯一日本のオリジナルで、しかもこれほど米国に浸透した理論はないくらいなのです。
 このリーダシップ理論は戦後の日本の企業形態を小集団心理学として研究していた日本人によってまとめられ、世界各国の心理学会でとても有名な研究となって発表されていますが、残念にも日本人は日本の研究を受け入れないという変なところがあって日本ではあまり広がりませんでした。
 日本人の誰もが、リーダシップを発揮する国民といえば米国を上げるだろう。米国の連続テレビや映画からすっかりそう信じ込んでしまっています。最近のハリウッド映画を取り上げて説明するまでもないでしょう。悪に対して、暗躍に対して敢然と立ち向かい地球人をまとめあげ、時には地底にすむ最後の人間たちをまとめあげてロボットや機械と戦う。それが昔からの米国人の真の姿であるはずです。
 日本人の研究者たちが発見し米国の経営者が取り入れた小集団心理におけるリーダシップ理論とは、パフォーマンスとメンテナンスという2つの軸でした。
 7人くらいの1つの集団が何か目的を達成しようとしたとき、いち早く目標を達成したりチームをまとめあげチームの成員一人一人に満足感を与えるグループとは、どんなグループですか。これが小集団心理学の課題でした。
 小集団には必ずその集団をまとめあげるリーダが生まれることは知られていました。
 しかし、何かの目的を達成する集団には2名のリーダが存在することを突き止めました。そのリーダの1人がパフォーマンスを上げるためのリーダであり、もう一人のリーダは集団の維持に関することに関心を向けるリーダです。それがメンテナンスのMである。生産性を上げるためのリーダはパフォーマンスのPで示され、PM理論といわれています。
 そしてその研究では、一人の人が2つの役割、つまりPとMの両方を兼ね備えてチームをまとめることはできないことも実験から証明されていました。
 PM理論はわかりやすくいうなら、Pとは「さっさとやれっ。」と厳しく命令する鬼将軍のことであり、Mとは仏の○○さん、といわれる優しい女房役です。
 社長が生産性や利益ばかり追求する厳しい性格であるなら、専務は「社長はああやっていうけどな、真意は違うんだ。」というような肩たたき屋です。企業によっては地位が逆転している場合もありますが、うまくいってる企業のほとんどがこのような2名のP役とM役をするリーダで構成されていることがわかったのでした。
 つまりわれわれが知っている終身雇用制と年功序列制度の本質は、PM理論を実現するための土壌であったというのです。
 米国の企業体制がチーム制という制度によって蘇ったのにはそのような背景がありました。
 バブル崩壊後の日本は米国に習ってチーム制を導入し、不況を切り抜けようとしました。しかしそれは間違いでした。米国でいうチーム制というのは、本来日本人が発見し日本人が自然と企業に導入してきたPM理論を実現するための方法だったのです。
 日本人にはそれがわかりませんでした。
 本当は逆輸入したチーム制でしたが、日本では単に7名くらいの人数からなる兵隊の集まりとして適当な役職による責任制と思い込んでしまいました。
 正しいチーム制とは、役職に付随して、生産性よりもそのチームをまとめるリーダと生産性を上げるためのリーダの2名を備えた残り5名の成員を構成するものでなくてはならなかったのです。
 7名からなる責任制と思い込んでチームを構成されるので、どのような結果になったかというと、生産性が上がらない成員を追い出すためのチームになってしまいました。
 IT軍団もその犠牲者でした。
 コボル、フォートランの時代からIT軍団は7名くらいのチームを組まされます。当然、チームの成員の能力には格差があります。格差に関係なくプログラムの量が与えられます。できる人はこなしますが、できない人はチームの足を引っ張ることになります。これではチームで問題解決をするのではなくて、チームの成員同士が仕事量を監視するように機能してしまいます。きわめて日本人のメンタリティとはかけ離れた生産形態を強いられることになったのです。そのことがゲーム製作においても、HP制作についても同様な形態をさせてしまうことになってしまったのです。
 その結果、一人抜けまた一人、とプログラマは消えてしまいました。こうして老獪な知恵者のエンジニアが育つことなく今日まで来てしまったのです。
 今日、終身雇用制と年功序列制度を再検討して導入しようとしている企業は、実はPM理論を取り入れる、もしくはPM理論を復活させる、という目的でそうしようとしているわけではありません。
 もし読者諸氏が何かのチームを組んでことに当たろうとするなら、PM理論をうまく使うことです。特にチーム作りに失敗してきたIT関連の方々は、生産するという目的を持っているので日ごろから実践的に訓練しておくことが将来のIT軍団には有益であろうと考えられます。
 こうして考えていくと「評価」とは何か、という問題に突き当たります。機会があったらまとめることにして、今日はここまで。

(続)



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