北海道のアイヌ民族の文様は平成13年に北海道遺産に認定されました。
 その形状や図案、色彩は印象深く、アイヌ民族の精神的意味合いが込められています。時が経っても廃れないばかりか近年ますます注目が高まっています。
 平成15年に「摩周湖」と共に、北海道遺産の切手として販売されました。



 本州東北部から北海道、千島列島、樺太などに住んでいたアイヌ民族には、今なお伝えられている独特の文化があります。その一つが民族衣装や日常用具、祭儀の道具などに使用される文様です。
 世界には、独特の意味合いを込めた文様を伝えている民族が多数あります。アイヌ文様の特徴としてはモレウ(渦巻文様)、アイウシ(括弧文様)の2つの基本形を組み合わせて、連続した線で結んでいくことにあります。組み合わせの変化のバリエーションは無限にあり、独創性にあふれています。
 モレウは川の流れで生じる渦、北国ながらの厳しい風、木に絡まるツタなどからヒントを得てあみだされたと言われています。自然の中に神を見いだしたアイヌ民族ならではの文様といえるでしょう。
 アイウシは数学などで使う中括弧と形が似ています。
 それら基本形に加え、木彫り特有の文様でラムラムノカ(うろこ文様)というものもあります。
 これらの文様は地方によって特徴があり、服を見ただけでどの地方のアイヌかが分かったと言われています。



 服飾に用いられる文様は刺繍で入れたり、別の布を張り合わせた切伏、布を切り抜いく切抜といった方法で施されます。
 アイヌ文様は家紋のように祖母から母へ、さらに娘へと伝えられました。文様をハサミで切る方法や布の置き方、針の刺し方も大切な知識として受け継がれていくのです。
 昔はアイヌの娘が年頃になり、好きな男性ができると求愛の印として手甲を贈る慣習がありました。贈られた男性は求愛を受け入れるならそれを身に着け、そうでなければ身に着けませんでした。求愛のステップは手甲、脚はん、鉢巻き、着物と続けていきます。



 男性の場合はメノコマキリという、これまた美しい装飾を施したものを贈りました。メノコはアイヌ語で女性、マキリは小刀やナイフの意味なので、つまりは女性用の小型ナイフです。メノコマキリを腰に帯びてもらえば、求愛は受け入れられたことになるのです。結婚後に夫に先立たれた場合、妻は夫から贈られたメノコマキリの刃を夫と一緒に葬り、鞘だけを携える風習もありました。


 

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