■地方記者日記142
臭い |
by大谷地恋太郎 |
何か臭いがした。
昨日から、周囲が臭う。
食事の残り物が腐ったような感じがした。
否、ちょっと違う。冷蔵庫からか、と思って扉を開けたが、何も臭わない。
そのうちに、思い当たることが一つあった。
そう、手をかいでみると、手が臭いのだ。
トイレの後は洗ったし、かすかに臭うこれは何なんだ、と思った。
実は、だった。
天然温泉の臭いなのだ。
前々回、温泉街に数泊したことを書いた。
その時、温泉の入浴方法を変えてみたのだ。
温泉に浸かる。
通常だったら、頭や体を洗って再び浸かってから、湯かけで、体を流す。
通常の温泉センターなら、この最後の湯かけは通常のお湯だ。
しかし、これは本来の温泉の入り方ではない。
そう、温泉の湯がせっかく体に付着しているのだから、これを洗い流してはいけないのだ。
最後に温泉の湯に浸かったのなら、そのまま流さずに、自然に乾かすのがいいのだ。これによって温泉の成分が体内に皮膚から吸収されたり、皮膚に付着したりして、温泉の効用がより高くなってくるのだ。ただのお湯で流してしまうのは、ナンセンスなのだ。
自然に乾かすのが難しいのなら、乾いたタオルで軽く体をたたくように水分を拭き取るのがいい。あくまでも温泉の湯を流しきらないのが良いのだ。
これを数日続けていたせいなのだろう。
どうも、臭かったのだ。
最初は理由が分からなかった。
しかし、温泉以外、臭いの理由は分からなかった。
こんなに持続するとは思わなかった。
やはり、温泉は長所だけではないのだろう。温泉に喜んでいるわけにはいかなかった。
もう一つ、余話も。
この温泉、強烈な酸性の成分と硫黄分を含んでいて、独特な湯を売り物にしている。
酸性の成分が強いから、様々な細菌が死んでくれていて、ちょっとした皮膚病は治ってしまうほどだ。水虫なんか、簡単に治った。
酸性のおかげで、僕の体は無菌状態になった。
無菌になった、ということは、無抵抗な身体になったと言うことなのだろう。
温泉街から戻ったら、風邪を引いてしまった。
無菌状態なので、抵抗力がなくなったのだろう。
僕は無菌状態ですよ、なんて女性にナンパしてもいいよなあ、なんて、体調の悪くなったベッドの中で考えていた。
無菌男。笑える。
やれやれ。
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(続き)
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