大谷地恋太郎の地方記者日記

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作者紹介
ペンネーム:大谷地恋太郎
日本各地を転々とする覆面記者。
取材中に遭遇した出来事や感じた事を時に優しく、時に厳しくご紹介します。

(以下は大谷地氏とは関係ありません)

島 善鄰(1889-1964)
広島生まれ。現在の花巻市で幼少時代を過ごす。園芸学を修め、1916年(大正5)に青森県農事試験場技師となりリンゴの栽培改善に取り組む。1923年(大正12)にはアメリカからゴールデンデリシャスの穂木を導入するなどリンゴの研究と普及につとめ、周囲からは『リンゴの神様』と言われた。1927年(昭和2)北海道帝国大学助教授、1950年(昭和25)六代目北海道大学総長に就任。

■地方記者日記142
 臭い
by大谷地恋太郎

 何か臭いがした。
 昨日から、周囲が臭う。
 食事の残り物が腐ったような感じがした。
 否、ちょっと違う。冷蔵庫からか、と思って扉を開けたが、何も臭わない。
 そのうちに、思い当たることが一つあった。
 そう、手をかいでみると、手が臭いのだ。
 トイレの後は洗ったし、かすかに臭うこれは何なんだ、と思った。
 実は、だった。
 天然温泉の臭いなのだ。
 前々回、温泉街に数泊したことを書いた。
 その時、温泉の入浴方法を変えてみたのだ。
 温泉に浸かる。
 通常だったら、頭や体を洗って再び浸かってから、湯かけで、体を流す。
 通常の温泉センターなら、この最後の湯かけは通常のお湯だ。
 しかし、これは本来の温泉の入り方ではない。
 そう、温泉の湯がせっかく体に付着しているのだから、これを洗い流してはいけないのだ。
 最後に温泉の湯に浸かったのなら、そのまま流さずに、自然に乾かすのがいいのだ。これによって温泉の成分が体内に皮膚から吸収されたり、皮膚に付着したりして、温泉の効用がより高くなってくるのだ。ただのお湯で流してしまうのは、ナンセンスなのだ。
 自然に乾かすのが難しいのなら、乾いたタオルで軽く体をたたくように水分を拭き取るのがいい。あくまでも温泉の湯を流しきらないのが良いのだ。
 これを数日続けていたせいなのだろう。
 どうも、臭かったのだ。
 最初は理由が分からなかった。
 しかし、温泉以外、臭いの理由は分からなかった。
 こんなに持続するとは思わなかった。
 やはり、温泉は長所だけではないのだろう。温泉に喜んでいるわけにはいかなかった。
 もう一つ、余話も。
 この温泉、強烈な酸性の成分と硫黄分を含んでいて、独特な湯を売り物にしている。
 酸性の成分が強いから、様々な細菌が死んでくれていて、ちょっとした皮膚病は治ってしまうほどだ。水虫なんか、簡単に治った。
 酸性のおかげで、僕の体は無菌状態になった。
 無菌になった、ということは、無抵抗な身体になったと言うことなのだろう。
 温泉街から戻ったら、風邪を引いてしまった。
 無菌状態なので、抵抗力がなくなったのだろう。
 僕は無菌状態ですよ、なんて女性にナンパしてもいいよなあ、なんて、体調の悪くなったベッドの中で考えていた。
 無菌男。笑える。
 やれやれ。

(続き)



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