大谷地恋太郎の地方記者日記

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作者紹介
ペンネーム:大谷地恋太郎
日本各地を転々とする覆面記者。
取材中に遭遇した出来事や感じた事を時に優しく、時に厳しくご紹介します。

(以下は大谷地氏とは関係ありません)

岩崎 行親(1855-1928)
香川県生まれ。東京英語学校を経て内村鑑三、新渡戸稲造、宮部金吾と共に札幌農学校2期生として入学。卒業後は北海道ならびに東京で官史となる。1894年(明治27)鹿児島尋常中学校の校長となり、以降鹿児島県教育の発展に貢献した。

■地方記者日記148
 値上げ
by大谷地恋太郎

 最近、身近なものが値上げをしている。車のガソリン代、暖房用の灯油代、食品、コーヒー、マヨネーズ、蕎麦、うどん、ティッシュペーパーなど日々生活に欠かさない製品の値上げが続いていて、多くの住民が生活に直撃をしているのだろう。
 特に我々地方で新聞記者として生活していると、車での移動が必要不可欠になってくる。東京本社や札幌とは全く違う。車が生活の一部になっている。そのガソリンがジワジワと値上がっているのだから、たまらない。
 以前にも書いたと思うが、地方の新聞記者は、マイカーを仕事で使っている。仕事にマイカーを差し出している、と言った方が正しいだろう。差し出した分、車両維持費がもらえる。当然だが、わずかな金額だ。そして使ったガソリン代は、社によって違うがある程度の割合を補助として請求できる仕組みになっている。
 わずか三年前のガソリン代を思い出して欲しい。1リットル、110円台だった。ハイオクにしても1リットル120円しなかった。それが最近ではガソリンが150円近いし、ハイオクに至っては160円になってしまった。
 場所にもよるが、私の管轄する取材範囲は、担当する市町村も多く、守備範囲が広いためか、ここに着任しての走行距離はぐっと伸びた。一年平均で2万キロも走っている。一カ月に1500キロから2000キロも走っている。
 燃費はリッターあたり8キロから10キロとそんなによくない車だが、一カ月200リットルを消費している計算だ。ハイオクを使っているので、それでけで一カ月3万2000円も使っていることになる。
 仮に一割を個人負担としてみなす会社なら、3200円は自己負担することになる。二割が自己負担なら6400円も自己負担になる。とんでもない値上げなのだ。
 バブル経済が崩壊後、特にこの十年以上は、物価の値上げがなかった。なかった分、日本人は「値上げ」という言葉に鈍感になってきたのだろう。しかし長引く不況で、人々の消費活動は止まっている。一部のカネがある連中と、そうした親からカネをもらって遊んでいる子ども、しかも二十歳を超えた子どもが金を使いまくっているだけなのだ。女優三田佳子の息子の逮捕は、トンデモナイ一例として我々一般市民は受け入れた。大の大人に小遣いを数十万円もあげる親なんか、どこにいるのか、と疑いたくなった。
 仕事で使うマイカーのガソリン代の自己負担が数千円になる、という事実をどう解釈していけばいいのだろう。
 灯油の値上げも寒冷地の生活を直撃している。
 北海道に限らない。否、北海道のように住宅が密閉した造りになっている方が、冬は暖かい。二重窓もそうだろう。しかし本州の住宅の造りは、寒冷地対応になっていないから、冬になると異様に寒さを感じる。私が三年前に北海道からこの土地に転勤した初めての冬、あまりに家の中が寒すぎて驚いた。札幌で借りていた賃貸のマンションの部屋は、真冬の朝、ストーブを点けなくても室温は10度以下に下がったことはなかった。それなのに、この支局の冬の室温は、何とわずか2度まで下がっているのだ。寒冷地仕様になっていない、貧弱な造りがこうさせている。灯油ストーブをたき、エアコンの暖房のスイッチを入れて、ようやく何とか10度以上になる。そのせいか、この三年間、冬になると風邪を引くようになってしまった。寒いのだ。
 すべては原油の元売りの値上げが原因だが、どこで高値での値止まりがあるのかどうか。
 米国に追従し、イラク支援のためだとか言って法律を新たに作ってまでして、インド洋で自衛艦が外国の艦船にたっぷりと給油するぐらいなら、私がつとめている支局と私のマイカーに給油してくれ。そういう主張を、民主党はなぜ出来ない。

(続き)



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