黒山の人だかりとは正にこの事で、先日開催された「鯨肉を使った料理試食会」には大勢の市民が詰め掛けました。鯨生肉の握りや懐かしい鯨ベーコンのほか、竜田揚げ、西京焼き、鯨つみれ汁など7種類400人分が、それこそアッという間に参加者の胃袋の中に収まったのでした。
釧路沖の沿岸域における調査捕鯨は、今年から毎年60頭の枠で実施される(昨年までは隔年50頭)ことになり、すでにこの9月13日から始まっています。(10月17日現在51頭捕獲)
この事業に合わせて、網走から下道水産という鯨解体工場が進出、副産物としての鯨肉が市場に出回ることになりました。勿論、釧路市場だけでなく全国の市場に発送され、その収益が翌年の調査活動の資金になるのですが、生肉は捕獲から一週間以内でなければ食せないらしく、つまり生肉料理だけは釧路の占有になるわけなのです。
しかも、沿岸域調査のもう一箇所である宮城県沖合いは春5月に行われており、当然のことながら脂のノリが大きく違ってくるわけで・・何を言いたいかお察しください。そこで、毎日のように水揚げされている鯨生肉を、是非多くの市民で分かち合って食べてみよう、ついでに昔にはなかった全く新しい食べ方も考えてみようということで、試食会の前には創作料理コンテストも開かれることになったのです。
北海道日本料理研究会釧路支部と釧路割烹調理師会が和食部門10品を、全日本司厨士協会釧路支部の加盟店が洋食部門9品を出品。市議会や水産関係者、経済界の代表ら6人で審査が行われて、和食では「鯨肉のたたき」が、洋食では「3種類の調理法による冷製」が優勝を果たしました。試食会の参加者には、全19品のレシピが配られ家庭でも広く鯨肉料理が普及するよう細かい配慮もありました。
さて、国際捕鯨取締条約により、1982年から商業捕鯨モラトリアムがスタートしました。これは、鯨類資源についての科学的知見に不確実性があるとして、遅くとも1990年までに包括的評価を行うとともに捕獲頭数の設定について検討するまでの暫定的なものでありました。
ところが、米国やカナダ、ニュージーランドなどの反捕鯨国はこの評価を先送りさせるばかり。この間、国際捕鯨委員会の科学委員会による改訂管理方式(RMP)が完成し、毎年2千頭のミンククジラを捕獲しても資源に悪影響を与えないという結果が得られてもいるのにです。
釧路沖のミンククジラを解体すると、大量の回遊魚が胃の中から出てきます。商業捕鯨の禁止以来、増え続けている鯨類の捕食量は年間に約3億トン〜4億トンと言われていて、人類の全漁獲量約9千万トンの3〜5倍に達すると推計されています。釧路の漁業者の中にも、捕鯨禁止からイワシやサンマなどの回遊魚の水揚げが落ち始めたと訴える人も少なくありません。国際捕鯨委員会における採決では、徐々に商業捕鯨再開を支持する国が増えてきているようで、政府には更に力を入れて1年でも早く実現してもらいたいと思います。また、強硬に反対している国の多くは牛肉の輸出国というのが、この問題を複雑にしている一つの原因でもあるようですが、近年の牛肉を取り巻く事件のことを考えると、日本の食卓に早く鯨肉を呼び戻さなくてはならないとも感じます。牛肉は、国内産だけで充分に足りるようにできないものでしょうか。
ということで、鯨肉の食文化を釧路から発信する使命感から止むに止まれず、今夜も鯨肉文化の振興のために出かけることにしようかなあ・・
秋風ほどではないにしても、家族のちょっと冷たい視線を背中に感じながら・・・
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